作曲家シューマンについて
『シューマン~どんな人物なの?』
シューマンのフルネームは、「ローベルト・シューマン」といいます。
シューマンは世の中で大変誤解されている作曲家なのです。
多くの人々はシューマンを綺麗な旋律と、美しいハーモニーの小さな曲を書くことに長けていると思っているのです。
また人々はよく、シューマンは大きな形式を理解していなかったし音楽的なアイデアを大きく展開させることが出来なかったのだ。
と言っているのです。
でもこれほど事実とかけ離れた言葉はないのです。
シューマンは偉大な音楽づくりの建築家だったのです!
まず、「シューマン」に大きな影響を与えた作曲家は、「ベートーヴェン」です。
ベートーヴェンは曲を作るときに、小さな音楽の種を「ソナタ」、「交響曲」、「四重奏曲」の形式へと発展させました。
そしてこのモチーフは、(動機)から大きな作品へと発展させていくベートーヴェンの技法は19世紀の作曲家につまり、「リスト」という作曲家が作った「交響詩」、「ブラームス」という作曲家が作った「循環形式交響曲」、フランクという作曲家が作った「ニ短調の交響曲」から「ワーグナー」の作った「楽劇」にまでいたるまで影響を与えました。
1つのモチーフから曲を築いていく技法とは常に前に出てきた音楽の素材を使い、その素材を発展させていくのですが、古くは「フレスコバルディー」という作曲家の「カンツォーナ」、「バッハ」の作曲した「フーガ」、「ハイドン」の大きな作品、そして20世紀の作品まで西洋音楽史を通してみることができるのです。
シューマンは、小さなモチーフを取り上げて、いくつかの小曲を鎖のようにつなぐ連作を作るのにその技法を用いました。
「子どもの情景」などは比較的短めの美しい曲からなっています。
大きな作品はいずれもその中で小さな要素を結びつけるプランが作品全体を通して巧みに作用しているのです。
シューマンの子どもの情景以前の連作について
シューマンの最初の主要な作品であるアベックバリエーション作品1番は、実際には変奏曲ではないのです。
それは5つの音名を綴ったモチーフを基にした連作なのです。
その音名は、ABEGG(アベッグ)です。
このようにタイトルに音名を使うシューマンの手法は絶えず彼の作品の中に見られるのです。
アベックヴァリエーションのテーマの曲は、異なる音域で繰り返されながら展開する5つの音のモチーフです。
主題の曲の後半ではそれらのモチーフが逆向きになっているのです。
実は?もう、ここからシューマンの音楽の遊びが始まっているのです!
彼はモチーフをもてあそぶことでアベックヴァリエーションのテーマを作っています。
また音楽上の要素と空想の伯爵夫人や仮面舞踏会といった音楽以外の事柄を結び付けています。
シューマンはほかにも「変奏曲」を書いていますが、彼はそれをアヴェックバリエーションの前には出しませんでした。
彼の初期の作品では、モチーフをもてあそんで造ることが彼自身へのいい刺激になったのです。
初期の作品のあるものは、現在出されています。
シューベルトのワルツによる変奏曲、ショパンのノックターン作品15の3番による変奏曲、ベートーヴェンの交響曲7番の主題による変奏曲、などがそれなのです。
シューマンは同じく初期の連作の1つである、カーナヴァルに4つの文字に基づく愛らしい情景という、副題をつけています。
ここでは、シューマンの言葉遊び文、字の遊び、そして、音楽の遊びがかなり複雑になっているのです。
実際には、そのモチーフは4つの音ではなくて、4つの文字であって、シューマンはカーナヴァルの真ん中の部分のスフィンクスと呼ばれる3つの旋律でそのモチーフを明らかにしているのです。
スフィンクスでなぞが表に出てカーナヴァルの秘密が解き明かされるのです。
アッシュ(ASCH)の4音または、4文字は当時彼の恋人だった、エルネスティネフォンフリッケンの故郷の町の名前を綴ったものです。
そして、順番を変えた「SCHA」は、シューマンの名前を表す文字。
また、4文字の音程でASCHのように表すことができるのです。
またAフラットのドイツ語はAS(アス)なので、AS(アス)、C(ツェー)、H(ハー)は3音ですが、これも元をただせばモチーフの4文字なのです。
カーナヴァルの全ての曲は何らかの方法で、これらの4文字を使っているのです。
子どもの情景作品15番について
シューマンの作品の後の方の連作の1つであります1838年の子どもの情景作品15番の話をしま~す。
シューマンは愛するクララにあてた1838年の3月の手紙に私は突然30曲ばかりの風変わりで面白い曲を作曲して、その作曲した曲の中から12曲を選んで「子どもの情景」と名づけた。
と書いているのです。
でも、この12曲は子どもの情景が出されたときには13曲になっているのです。
子どもの情景には作品を演奏するにあたって、演奏の手引きになる音楽用語(楽語)である表示されているALLEGRO(アレグロ)、ADAGIO(アダージョ)という音楽用語もつけられていません。
でも、名曲のタイトル(標題)の持つ意味は重要なのです。
タイトルは何の意味をしているのか、そしてそれが演奏に与える影響について考えることは演奏者に任された課題なのです。
さてさて、シューマンはどのようにして子どもの情景という曲を作ったのか・・・。
それは彼が書いたものを通してかなり詳しく知ることができるのです。
彼は同じモチーフを持った曲をたくさん書いています。
シューマンが作曲した「子どもの情景」が完成に至るまで順序、段階は「選ぶこと」と、それをとぎすます作業だったのです。
最初にたくさんの小さな曲を作って、それから1つ1つの曲を選んで適切な順番に並べていったのです。
この方法によってシューマンは、13の美しい曲からなる名作、「子どもの情景を」作りあげたのです。
見知らぬ国から~子どもの情景から
シューマンはこの連作の最初の曲に風変わりなタイトルをつけることで見知らぬ土地の人々に対する想像を書きたてようとしたのです。
「見知らぬ国から」は音楽的には極めて単純。
そして、繰り返しの多い曲です。
曲の冒頭の5音のモチーフは12回も繰り返されます。
優れた作曲家だったら、どんな子どもにでも座ったまま何回も何回も、繰り返して弾ける曲の書き方はしなかっただろう・・・。
と思うかもしれません。
でも、シューマンには音楽の形式上、そうしなくてはならない理由があったのです。
最初のこの曲はト長調です。
局を通して転調(その調が変わること)も調整の変更もしていません。
冒頭の第一のモチーフは上に上がる6度音程と付点のリズムを伴った下行する音階で出来ています。
モチーフのB(ベー)(ドイツ音名)シのフラットの音・G(ゲー)ソの音、F#(フィス)ファの#の音、E(エー)ミの音、D(デー)レの音は何回も繰り返されます。
なんでそんなに繰り返されるの?
というと音楽上の理由は実はその5つの音が子どもの情景の全曲にわたる基本のモチーフだからなのです。
シューマンはこれを繰り返すことで聴く人の意識に耳に、心に、それを記憶させていって連作全体を通して変化しながら出てくるモチーフに気がつくようにしているのです。
それなので、リピート(繰り返し)は全て楽譜に書かれている通りに弾かなくてはならないのです。
さてさて、この曲の素材のなにがそんなに異国なのでしょう。
それは、こんな単純なハーモニーの単純なト長調の曲ですが、最初のフレーズに減7度という音程が使われているのがどちらかというと、不可思議なのです。
1838年の当時はこの減7という和音といえば決して荒らしい不協和音ではありませんでした。
でも、この単純な曲での減7の和音は不可思議な瞬時を作り出しているのです。
この曲の仕組みは、非常に内密にできており、デリケートなのです。
減7のハーモニーは何回も繰り返されるうちに、だんだん不思議な感じで薄れていきます。
それがこの曲の持つ情感があって、見知らぬ土地の見知らぬ人々は繰り返しを通していくうちにだんだん異国ではなくなって、少しずつ親しみを感じさせていくのです。
珍しいお話~子どもの情景から
まず演奏する人は、この曲の何が珍しいのかというのを決めなければなりません。
珍しいお話は、とても短い時間の中でさまざまなムードが入っている曲です。
ある時期、シューマンとショパンはお互いに尊敬しあっていました。
シューマンはカーナヴァルのある曲の中でショパンの肖像を描き出しています。
またシューマンは彼のクライスリーナをショパンに捧げられています。
そして同じ頃に、ショパンはヘ長調のバラードをシューマンに捧げているのです。
シューマンは「珍しいお話」をマズルカとは呼んでいませんがこの曲は、マズルカの踊りの要素を全て備えています。
そのことを認識すると曲を演奏するときにテンポや、アクセントを決めるのに役立つのです。
「珍しいお話」はむしろ、ショパンのマズルカを弾くような感じで演奏するといいのです。
冒頭のモチーフの扱いはすごく複雑です。
最初の4小節の中に5音基礎のモチーフが3回出てきます。
1回目のモチーフの提示は早い装飾音符♪(かざりの音)でリズム的に短くされて4度を含むF#ファの#(シャープ)の音、Bシのb(フラット)の音、Aラの音、Gソの音、F#ファの#の音です。
和声上6度の間に4度が入ると三和音を形成して、これはシューマンの子どもの情景から満たされた幸福、大きな出来事、トロイメライ、きまじめの曲で新しいことを開拓します。
でも、Dレの音より、F#ファの#の方が旋律であるために大切でDレの音による6度音程は、ささやかな提示にしか過ぎないのです。
おにごっこ~子どもの情景から
この曲は連作の中で技術的に一番難しい曲です。
でも、構成は非常に単純です。
ロ短調に書かれたこの曲は、モチーフの原型に戻りますが、その中で曲は素朴さをとり戻しています。
これらの曲はどれも基本のモチーフに何かをしています。
さて、この曲にはどんなことが残されているのだろうか?
実は、ここで初めて付点のリズムが除かれているのです。
冒頭のフレーズには基本のモチーフの基本音程Bシbの音、Gソの音、F#ファの#の音、Eミの音、そしてDレの音が現れますが、すぐにC#ドの#の音、Aラの音、Gソの音、F#ファの#の音、Eミの音に移調されます。
2回目の移調は3,4小節に行われて、F#ファ#の音、Dレの音、C#ド#の音、Bシbの音、A#ラ#の音となります。
この曲の最初のフレーズは6度音程と音階の組み合わせかそれらをもてあそぶことによって出来ています。
ジグザグのモチーフはこの曲の鬼ごっこには出てきません。
これらの曲を演奏するときには、シューマンの複雑なアイデアを吸収出来るように与えられた指示を守り、それぞれのセクションを繰り返すことでうまく演奏が出来ます。
おねだりする子ども~子どもの情景から
この曲のタイトルは曲を解釈するうえで大切な手がかりになっています。
曲はニ長調です。
「おねだりする子ども」は同じ音楽の素材。
つまり、この連鎖の最初の曲に出てくるのと同じ音程Bシbの音、Gソの音、F#ファ#の音、Eミの音、Dレの音からなる基本のモチーフを使っていますが、フレーズの最後にチョットした工夫がしてあります。
曲の最後に、この曲を聞いていて私たちの意識に残る音程は、減5度の音程ですが、これは16小節目の旋律のC#ド#の音、がGソの音にあがったものです。
そしてドミナントA7(ラの音の5度上の音の和音)のハーモニーでこの曲を終わることによって、おねだりが満たされていない状態にしています。
おねだりする子どもは、最後の「おねがい!!」とため息をついて頼んでいるのです。
おねだりする子どもを演奏するときに、シューマンのデュナミーク記号は大変重要なのです。
3小節から5小節にかけてのPピアノから、PPピアニッシモへの変化は同じフレーズが繰り返されるときは、コントラストをつける表現方法でこだまするように演奏することを示唆しています。
2回目のフレーズの切望するような内にこもった感情は、ダンパーペダルをたっぷり使って鍵盤を浅めに弾いて、ソフトペダルを加えると上手く表現することが出来るのです。
大変な出来事~子どもの情景から
シューマンはこの連作の中で比較的複雑な曲を単純な曲の間に平均的に配置しています。
たとえば、「見知らぬ国から」が構成が単純です。
2番目の曲の「珍しいお話」では、概にモチーフが何回か変化したり複雑になったりしています。
「鬼ごっこ」と、「おねだりする子ども」はモチーフを比較的素朴に扱っています。
「満たされた幸福」では、複雑なカンジになっています。
そして、この曲「大変な出来事」はまた単純な曲になっています。
このように、より複雑に展開されたモチーフの曲が連作のあちらこちらに置かれています。
それらは、2番目の曲と、5番目の曲と、7番目の曲と、11番目の曲です。
さて、この6番目の曲の「大変な出来事」はさらに5度圏に沿って、イ長調にと進みます。
シューマンは、モチーフの取り扱いを繰り返すことはしないのです。
この連作のどの曲にも、彼の新しいアイデアや新しい形が見られます。
「大変な出来事」にも連作のこれまでのどの曲にも見られなかった要素があります。
それは冒頭の6度音程が4度を伴って和音として現れていること。
これは「大変な出来事」の1つではないだろうか。
6度と4度を伴う5音のモチーフがこの連作で最初に紹介されているのです。
この曲では、最初の和音として垂直になっています。
そして基本のモチーフの残りの3つの音は1小節目の高音部の旋律に続いているのです。
もう1つの「大変な出来事」は、2曲目から姿を消していた付点のリズムが戻ってきたことです。
付点のリズムは下行する音階の中に戻っています。
トロイメライ(夢)~子どもの情景から
「トロイメライ」は「子どもの情景」の中の偉大なる「ひととき」です。
これらの曲は1曲ずつ弾いてもいいです。
でも、連作全体を弾くことによってはじめて最高感激が得られるのです。
「トロイメライ」は、バッハの「フーガ」のように複雑かもしれません。
でも、バロック的な意味における厳密な対位法ではないのです。
演奏者は個々の声部の掛け合いと個々の旋律の掛け合いに常に注意をしなければなりません。
連作子どもの情景の第1番「見知らぬ国から」のト長調からの第6番の「大変な出来事」のイ長調までは5度圏の#(シャープ)の調に沿ってきましたが、第7番で突然、b(フラット)が1つ付いた新しい響きのヘ長調に移ります。
そしてシューマンは、再びカノンの技法を用いています。
複雑に重なっている声部を注意深くみてみよう!!
ここではシューマンの基本のモチーフの6度を4度と置き換えているのではありません。
だがトロイメライは、4度から始まります。
〔暖炉のそばで〕(子どもの情景から)子どもの情景の第2部は、3つの曲からなっています。
ヘ長調のトロイメライと、トロイメライの変奏曲にも聴こえるヘ長調の暖炉のそばでとハ長調の木馬の騎士です。
ヘ長調という、調性はドラマティックで響きを与えたようだが、まったく突然の響きというわけではないのです。
5曲目に3度離れた関係の調性のヘ長調が示唆されていた。
この関係は、連作が進むにつれてさらに明らかになっていくのです。
満たされた幸福~子どもの情景から
5番目の曲は、ニ長調のままです。
この曲はこの連作の中の盲1つの複雑な曲です。
3番目、4番目の曲はもっと単純でモチーフも基本の音程のモチーフに戻っていました。
「満たされた幸福」では、音楽の素材が激しく変化するのです。
最初の変化は基本的なモチーフを提示するとき元の音程のBシbの音、Gソの音、F#ファ#の音、Eミの音、Dレの音を完全に放棄してしまっていることです。
シューマンのタイトルは、ドイツ語で充分に幸福とか、まあまあ幸福といった意味です。
「満たされた幸福」は、「おねだりする子ども」への答えになっているのです。
つまり、おねだりする子どもと満たされた幸福は、おねがいや、おねだりとそれに対する返事というように対になっているのです。
このことは曲のテンポや曲の全体的な性格を決めるのに役立つかも知れない。
そしてその返事は子どもを有頂天に幸福にはしません。
かと言って、悲しませもしません。
なので、ほとんどテンポがいいという手がかりのタイトルの中に隠されているのです。
この曲は非常に対位的に書かれています。
曲は右手の旋律で始まって、左でそれを模倣する短い旋律の答えが続きます。
前にも対位的な要素の曲はあったが、「満たされた幸福」は、終始一貫して対位的です。
木馬の騎士~子どもの情景から
このハ長調の木馬の騎士は、技術的には油断がならないが、内容は連作のこれまでの曲ほど複雑ではないのです。
モチーフはジグザグ型に何かを混ぜ合わせたものが木馬の騎士を優勢に支配しています。
そしてこれら曲を演奏していくうちに、別々に出されたモチーフは実はみんな同じ素材が変化したもの。
つまり、6度音程と音階と6度の動くジグザグのモチーフが変化したものに過ぎないということが分ってくるのです。
この連作の中心部である前の2曲はヘ長調だったが、木馬の騎士では中立的なハ長調に戻るのです。
連作の基調はト長調なので、シューマンはト長調に戻る準備をしているのだというのが論理的な判断かもしれない。
でも、この曲では次の曲で驚かされることの準備をしているだけなのだ。
〔きまじめ〕(子どもの情景から)「きまじめ」はとても不思議な曲です。
タイトルもあいまいです。
とてもきまじめでなくて、まじめでないのでなくて、それはほとんどきまじめすぎるのです。
この曲のもう1つの不思議な点は嬰ト短調であるということです。
ハ長調で中立的な調性の領域に移って、この連作を丸く完成させることなのだろうか。
しかし、驚いたことに木馬の騎士がハ長調で終わったあと、きまじめで最初に聞こえてくる音はD#レの#の音なのです。
この音は何よりもハ長調のカンジを破壊してしまいます。
かと言って、ト長調の準備をするのではないのです。
最初はEbミのbの音が我々をハ短調の領域に導くのかと思うかもしれない。
それは不思議なことだが、まったく予期できないということでもないのである。
こわいぞ~子どもの情景から
第3部の最後の3曲は、3つの場面からなるドラマになっている。
怖がっている子どもが居ます。
多分、子どもは半音階を怖がっているのだろう。
母親はしばらくその子どもを胸に抱いて安心させますが、そのうちまた怖い事が戻ってきます。
そしてもう1度母親が胸の中で子どもを安心させたところで、曲は終わります。
11番目の曲のタイトル、こわいぞはとても効果的です。
曲のはじめに何か怖いことも前ぶれがあるはずです。
連作を演奏するときに、こわいぞの前で少し間を置いてもいいのですが、最後の3曲は続けて演奏します。
〔子どもは眠る〕(子どもの情景から)子どもは眠るには、夢のような要素があります。
連作の基調であるト長調に戻るのはわれわれをじらすかのようにまだ先の方です。
この12番には、ト長調はまったく出てこないのです。
もう準備も出来ているのですが、ト長調に戻るには13曲目を待たなくてはなりません。
冒頭のフレーズのモチーフは暗示されてその中に含まれているのだが、音の下りてくる前に行ったりきたり向きを変えたりするのです。
そして中間部に基本のモチーフがハッキリと提示されるのだが、今度はト長調から3度離れたホ長調です。
子どもは眠るは連作の4番目のようにハッキリ終わってはいません。
我々は宙に浮かされたように取り残されます。
この連作を演奏するときは、次の曲に向かっていくか、少なくとも最後の曲に向かって進むということを考えながら演奏するのです。
そして、それぞれ1曲1曲の曲の間に緊張感を持つようにします。
詩人のお話~子どもの情景から
前の曲で子どもは眠りについて、この曲の夢を見ます。
でも詩人のお話には何か普通の子どもが子ども時代に経験しないものが登場します。
それは詩人ですが、その詩人というのは至上の存在なのです。
これは、シューマン自身が話しているのだ。
という人もいますが、ベートーヴェンがゲーテ、あるいはシューマンの父親に話しているのだ。
という人もいるのです。
詩人のお話は、遠く離れた人間より大きなものの存在を夢見るような曲なのです。
詩人のお話には、基本のモチーフへの関連をハッキリ言及出来るような個所はないですが、曲の至る所にモチーフが示唆されています。
冒頭では導音(主音を導くための音、たとえばハ長調のド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドであったら、導音はシの音。
この音がないと主音であるもとの音、ドには戻って来れない。)に先行された4度の上行音程が出てきます。
基本のモチーフと形は同じですが、音が異なります。
詩人が実際に話しているところは小さな音符で書かれています。
これはテクニックを見せびらかすためではなくて、また音を飾る目的でもなくて、表現を豊かにするための小さな音符なのです。
小さな音符の使用は、18世紀後半の記譜法に見られる音楽の表現方法です。